大変動の2021年5月
2021年5月のビットコインは、高値が8日の636万円、安値が23日の363万円と、終値ベース(午前6時時点)での最大差は-42.3%となった。
3月・4月の最大差20%台(3月は上昇、4月は下落)と比べて、大きく変動した。
5月の下落により、おおよそ今年2月の上昇分を失ったビットコイン。5月の変動要因を整理してみる。
主な下落要因は?
①米テスラ社をはじめとする各企業のビットコイン保有スタンスの変化
②米国金融緩和政策の終焉
➂各国の暗号資産規制強化
1. 米テスラ社をはじめとする各企業のビットコイン保有スタンスの変化
5月に話題となった米テスラ社イーロン・マスクCEOのツイートは以下の通り。
5月12日(現地時間):米テスラ社がテスラ車のビットコイン決済停止を発表
5月16日(現地時間):イーロン・マスク氏がビットコイン売却を示唆
今年2月の上昇相場でも一役買ったイーロン・マスクCEO。
暗号資産に前向きな姿勢を示してきたが、今回はマイニングにおいて、化石燃料、特に石炭の利用が急増していることを懸念し、ビットコイン決済の一時停止に踏み切った。
また、その数日後には、テスラ社が保有しているビットコインの売却を暗示させるツイートにより、ビットコインの先行きに懐疑的な見方が広がった。
企業が今後も継続して買いで参入していくかどうかが、ビットコイン価格を占う上での焦点に。
大幅な価格下落により、ビットコイン投資に慎重にならざるを得ないという声も聞かれる中、5月中に数十億円相当のビットコイン購入を二度行っている米上場企業でビットコイン保有量トップのマイクロストラテジー社の動向にも注目したい。
5月の決算発表では、南米大手ECサイトのメルカドリブレ社や南米大手IT企業グローバント社がビットコイン購入を明らかにしており、ビットコイン保有を検討している企業は米国以外にも広がっていることが見て取れる。
国内では、ソフトバンクグループの決算発表の質疑応答で、財務資産としてビットコイン保有を検討していることが明らかになっており、もし前向きな進展が見られれば国内企業の購入に弾みがつきそうだ。
2. 米国金融緩和政策の終焉
5月19日に米連邦準備理事会(FRB)により公開された米国連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨にて、今後の会合にてテーパリングに関して議論することが適切との認識が示された。
テーパリングとは金融政策の一つで、主に景気回復局面において、量的緩和策による資産買い入れ額を徐々に減らしていくことを意味する。
テーパリングに関する議論の本格化時期、開始時期が焦点に。
FRBは昨年から新型コロナウイルスを金融システムにとって最大の脅威であると認識し、ゼロ金利政策とともに、量的緩和策として米国債や住宅ローン担保証券などを購入して市場に大量の資金を供給し、景気の下支えを行ってきた。
ここにきて、ようやく、米国でのワクチン普及も相まって、米景気回復の足取りが強まってきた格好だ。
米国時間で5月12日に発表された4月の米消費者物価指数(CPI)は前月比で0.8%上昇となり、2009年以来で最大と、予想を大きく上回る上昇幅となった。
2013年5月には、バーナンキFRB議長のテーパリング示唆により、長期金利の急騰、株式市場の下落と一時的に市場に混乱を招いた経緯がある。
昨年の新型コロナウイルス感染拡大以降、株式市場や暗号資産市場が上昇を続けていたため、市場参加者は特に警戒を強めている。
※次回FOMCは、2021年6月15~16日(現地時間)
3. 各国の暗号資産規制強化
今年3月インドで仮想通貨(暗号資産)の取引及び保有を禁止する法案の提案がなされており、19日にはインド政府が暗号資産の規制を検討する専門委員会を設置した。
全面的な禁止がなされるのか、規制に留まるのかにも注目が集まるが、どちらにせよ暗号資産市場にはネガティブな材料となりそうだ。
中国では、5月18日に金融業界団体により、同国の銀行や決済企業が仮想通貨(暗号資産)に関わるサービスに携わることを禁止。ビットコイン価格は、19日対ドルで節目とされていた4万ドルを割りこんだ。
さらに、21日には中国国務院金融安定化委員会が、ビットコインのマイニングと取引を取り締まる方針を明らかに。それを受け、複数のマイニングプールが中国での事業停止を発表。
英国ケンブリッジ大学のオルタナティブファイナンスセンターのBitcoin Mining Mapによれば、2020年4月時点で中国がマイニングパワー(ハッシュレート)全体に占める割合は、世界全体の約65%とされており、マイニング規制強化の影響は大きい。
中国でマイニングが盛んな中国西南部では、6月2日にエネルギー規制当局がマイニング規制に関する会合を予定している。
中国情勢を見据えつつ、40,000ドルを維持が焦点に。
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